ア イ メ イ ト 後 援 会 つ う し ん
会員レポート

04:アイメイトの生涯[学校編 Part1]〜訓練を受ける犬たち

(文:編集スタッフ)


プロローグ

なんかヘンだ。いつも怒ってばかりのお母さんが変にやさしい。今日は疲れたから勘弁してくれと散歩の途中で言を上げるお父さんか、遠くまで付き合ってくれた。末っ子のケンちゃんも学校から寄り道せずに帰って来て遊んでくれる。なんかヘンだ。お父さんに「がんばれよ」と言われた。お母さんは「元気でね」と僕をぎゅっと抱きしめてくれた。みんな、なんで泣いているのかなあ。

「さあ、行こう」とお姉さんに誘われて一緒にワゴン車に乗った。あれ、みんなは一緒じゃないの?大きな建物の中には、懐かしい匂いの仲間がいた。仲間が一緒で嬉しくてクンクン、ワンワンおしゃべりしたら、「no」ってしかられちゃった。

(次の日)いつお家に帰れるのかなあ……早く迎えに来てくれないかなあ…。

(1週間後)朝のワン・ツーの後はお姉さんと楽しいゲーム。ちゃんとできると沢山褒めてもらえて、かなりいい気分。どうやらここが、新しい「ハウス」らしい。

と、思っているかどうかはわかりませんが、生後2ケ月から約1年、暖かな家庭の温もりの中で育った候補犬たちは、視覚障害者の第2の目となって共に生活できるように、厳しい訓練に入ります。時には、視覚障害者の命を守るというとても大切な仕事もできるように。

協会には3人の歩行指導員と2人の研修生、そして4人の見習い中のスタッフがいます。指導員になるには3年間の見習い後、2年間の研修期間を経て、5年以上の経験や実績を積まなければなりません。なぜならアイメイトには使用者の命をも守るという重大な役割があるからです。訓練の中では、犬一頭一頭の個性をつかみ、その都度臨機応変な対応をしなければなりません。訓練中の裁量は指導員に任されることが多く、その場その場の状況判断、実行力と管理能力が求められるのです。

お忙しい訓練の合間に主任指導員の中野さんからお話を伺いました。

指導員の皆さんは、お一人何頭の候補犬を担当されるのですか?

基本的には6頭ですが、多い時には8頭を担当することもあります。

飼育奉仕から戻った犬がアイメイトになるには、どのような訓練を受けるのでしょうか?

服従訓練と誘導訓練に大別されます。

服従訓練とは?

服従訓練の第一歩は「sit」「wait」「down」を教え、「fetch(持ってこい)」「out(出せ)」を教えます。

服従訓練のポイントは?

まず、信頼関係を築くことが大切です。時には遊ぶこともありますが、「遊び」と言っても単に遊ぷのではなく、遊びの中で犬に自制心が育つ様に、犬が飽きるまで遊ぶのではなく、常に自分のコントロール下に置くようにします。服従訓練と同時に大切な命令語が「no」「good」です。厳しく見えるかもしれませんが、始めはビシッとチョークをしながら「no」と言います。次第にチョークをしなくても「no」と言うだけで、「no=いけないこと」だと分かるようになります。 「good」も同じで、良くできた時には頭の先から尾まで優しく手で撫でて、「good=気持ちいいこと」だと覚えさせます。 すると「good」と言われただけで、犬はよいことをしたと思うようになるわけです。

訓練に食べ物を使うこともあるのですか?

いえ、それは絶対にありません。食べ物がないとできないようでは「犬との信頼関係」とは言えませんからね。

誘導訓練とは?

まず「go」「stop」「left」「right」「straight」など、歩く方向を示す基本動作を教えます。つぎに「bridge(階段へ)」「corner(上下差のある所)」、段差に前足をかけて止まる訓練に入ります。ある程度までできるようになったら、より条件を厳しくしていきます。例えば人為的に障害物を作ったり、止まるぺき段差で人だけ止まらずに進んだり。

誘導訓練の際に注意していることは?

どの訓練も犬の様子を見ながら、飽きないように、上手くできた状態でその日の訓練を終えるようにしています。単に命令するだけでなく、犬が頭を使うような訓練をすることです。

それが「利口な不服従」ということにつながるのでしょうか?

「利口な不服従」というのは、例えば交差点で人が「go」と言っても、犬が危険だと判断したら進まないといったことですが、なにが危険かを見極めるのは犬の判断力によるところが大きいですね。訓練の中で他の指導員が運転する車に実際にぶつかったような状態を作り、時には犬の方に倒れかかかるようにして「車は危険だ」と教えることもありますが、どのような状態の車が危険なのか判断するのは犬なのです。

犬って腎いんですね。

人間が考えている以上に犬は頭がいい動物です。だから訓練中は真剣勝負、犬との駆け引きも必要です。人の顔色を見るずるい犬にしないこと、指導員の言うことは聞いても、使用者の言うことを聞かないようではいけません。

厳しい訓練の中で、不適格になる犬も出てくるのですか?

はい、初期の段階でサイズ(大きすぎる)、骨格(関節の異常)、車酔い、警戒心が強い、音響に弱いなどが不適格の対象になります。服従訓練の段階で予測できる場合もありますが、犬は変わりますので。なんとか育てていただいた方に報いたいとか、もう少しがんばれば、という気持ちが働いてあきらめきれない場合がありますね。通常の訓練は3カ月で終わるのですが、もう少し、もう少し、と思いながら長くなってしまいます。

最終的な判断は?

指導員同士で相談したり、理事長の判断を仰ぐこともあります。

理事長のお言葉で、「これだ」と思われたことをなにか挙げてください。

そうですね…、いつも「そうか」と思って聞いているから、「これ」といわれても…。ひとつ言えば、『犬が「さみしい」という気持ちになるような叱り方をしなさい』と言われたことがあリます。犬との信頼関係がないと「さみしい」という気持ちにはならないし、痛い思いをさせるだけではこういう気持ちにはなりませんよね。

訓練を終えた候補犬たちは、いよいよアイメイトとして歩行指導に入るわけですね。

6頭の中から使用者に合わせて選び、歩行指導に入ります。ここで教えることはあくまで、「基本」であり、使用者の生活様式によって、命令語も増えていきます。応用力のある犬が、アイメイトとして巣立っていくのです。

理事長の「言葉」から

「犬を叱るのは単なる動機付けであり、犬は褒められることで喜んで働く」
「指導員は、犬の訓練に関しては職人であり、歩行指導に対しては教育者でなければならない」
「犬に尊敬される主人であること」

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